人類最速の男、ウサイン・ボルト。
日本の桐生君も9秒台を出したと言うが、ボルトを抜くには
スパナスーパーな奇跡が起きないと無理だろう。
ただスタートから40mなら、ボルトより速いサッカー選手がアーセナルに居るというニュースを聞いた。
とは言え、陸上競技と違って純粋かつ精密に計測した訳では無いだろうからそれは話半分としても、何とか条件を付ければボルトのような強敵でも、ねじ伏せるのは不可能では無いはずだ。
土曜日に行われた、対浦和レッズレディース戦。
実は密かに、我がエルフェンの勝利を確信してキックオフを迎えた。
去年のチャンピオンチームに対し、主力がごっそり抜け、入れ替わった選手もどちらかと言えば無名で実績のないエルフェン。
両チームをボルトと桐生に例えたら、よもやエルフェンをボルトと言う酔狂はいない。
それでも序盤、ペースを握って先制を果たしたのはエルフェンの方だったし、負けたとは言え向こう得点はセットプレー絡み、レッズはエルフェンにとって到底勝ち目のないチームに思えなかった。
背景には去年より増した守備力が上げられる。
去年からSBに定着した秋田谷。
レッズ戦でもシュートを放つなど、自分に課した課題があって、それを確実に消化しているように見える。
「駆け上がってクロスを上げるはシュートも決めれる」となれば、エルフェンの長友と呼ばれ、評価される日も遠くない。
彼女はギヤを一段ごとチェンジするかの様に、一歩ずつ確実に成長している。
秋田谷が一段ごとだとすると、二段くらいすっ飛ばしちゃった様に見えるのが奈良だ。
松田エルフェンでも前半戦DFで出場していた。
今だから言うが、どうしてそんな起用をしていたのか理解出来なかったし、実際、相手に幾度となく振り切られ決定的なチャンスを与えていた印象が深い。
その選手が今年に入ってまるで別人に見える。
元々恵まれた体格を生かして対人プレーに強いし、薊の得点に繋がるフィードは彼女からだった。
何が変化をもたらしたんだろうか?
攻撃的な選手だった彼女。
去年は渋々DFと言う役目をこなして居る様に見えた。
今年はチーム事情もあるだろうが、なにかDFに面白味を見つけ、積極的に関わっているように感じられる。
このままギアを吹っ飛ばすように成長して、中沢や闘莉王のように日本を代表する選手になってもらいたい。
そうした成長株の他に、やはりエルフェンと言えば薊。
類希なスタミナとスピードは女子サッカー界でも屈指、他の選手の2倍走っていると言われたら素直に信じてしまうほど、ピッチを縦横無尽に駆け抜けていた。
相手DFから見れば、ライバルをぶち抜くボルトに似て「スピード勝負じゃ勝てない」と思わせるに十分だし、前線から守備までこなす活動エリアの広さから、相手チームにとって「ウザい」存在であるのは間違いない。エルフェンの「ウザいボルト」薊。
今年エルフェンのファーストゴールが薊だったのは当然で、これから更に乗っていけるはずだ。
そうは言っても1ー4は惨敗だし、エルフェンより実力上位の対戦相手ばかり、厳しい戦いなのは紛れもない。
スマートでクリーンなサッカーをするエルフェン。
それはこのチームの特徴だし、応援したくなる大きな要因ではあるけれど、理想のサッカーを目指す前になんとしても上位リーグに定着しなければならない条件が付く。
実力的にリーグ下位のエルフェンが上位に戦いを挑んで行くには、相手が嫌がるサッカーが必要なのは言うまでもない。
高野や桜林は相当相手を嫌がらせてたに違いない。
他の選手はどうだったんだろう?
基準が薊になってしまうせいもあるが、どうしても運動量不足に見えてしまう。
オフサイドを気にせず、何度も相手の裏を伺う。
サイドチェンジやデコイラン、マークに付いた相手選手を釣り出す動きが少ない様に見えるのだ。
伊藤香菜子なら、それでも何とかしてくれたろうし、鈴木薫子なら強引なドリブルでゴールをこじ開けただろう。
今のチームで是非見たい選手達ではあるが、去ってしまった選手を懐かしむより、今回運動量不足に見えた選手が奮起すれば、まだ誰も見たことのないエルフェンが誕生する。
肉体改造してスーパーな選手になり、相手を圧倒するのは正当なやり方だが、ソレでは時間が掛かりすぎる。
オフサイドに幾ら掛かろうとも常に相手DFラインの裏を狙う。
サイドチェンジでマークを揺さぶる。
ボールホルダーに体を寄せて自由にさせない。
どれもこれも疲れる作業だが、相手にとってウザいプレーを続ける事はもう明日からでも出来る。
特に前線の選手は動き回ってスペースを作り、味方のパスを引き出す工夫をして欲しい。
ああっ、さっきから連発している「ウザい」は「鬱陶しい」と同義。
高校の先生によると東京西部の方言らしい。
まあ、このブログの読者なら、ウサインボルトを引っ張り出すために使ってる事はお見通しでしょうが。
レッズ戦で秋田谷が放ったシュートには可能性があったし、大谷のシュートも苦し紛れではなく決めるつもりで撃ったはず。
マグレでも決まれば大きな自信となる。
それこそがゲームに出続ける意義だから、どんどんチャレンジするべきだ。
成功が個人の成長をギアアップする。
ギヤチェンジした個人がチームのギアをスムーズに回していけば、エルフェンはどこまでも走り出して行けるチームになる。
キャプテン薊が試合後しばらく俯いてた。
彼女の悔しさを共有し、それをバネに前を向こうとする者がピッチ上に11人揃う日を、12人目の俺達はゴール裏から待ち望んでいる。
それがそんなに遠くない日だって事、風が知らせてくれてる。
行こうぜエルフェン!風を受け止めて。